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さて、夏に比べて徐々に朝が起きづらいという方はおられますでしょうか。
本日は「睡眠の秋」という形でお話をさせて頂きます。
クーラーがなかった一昔前、夏の夜は寝苦しく早朝に目が覚めやすい環境でした。しかし秋口になれば気温も下がり、寝やすい環境になりつつあります。「暑すぎず寒すぎず」と睡眠環境としてはうってつけなのですが、この時期は日中は日差しが強く汗ばむ一方で朝晩が冷え込む、という日中の温度変化ー寒暖差が大きくなる時期でもあります。
私たちの体内では日光を浴びる事で「セロトニン」という影響するホルモンを分泌します。
※セロトニンは脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンの原料で、メラトニンには、季節のリズム、睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌のリズムといった 概日リズム を調整する作用があります。
夏から冬にむけて日照時間がどんどん短くなっていくと、この「セロトニン」が分泌されにくくなります。「セロトニン」不足により気持ちが落ち着かず不安の気持ちがでて、眠りの質が低下し、睡眠不足に繋がってしまいます。
私たちの身体は内部で上記の(寒暖差)(日照時間の不足)について調節をしようとしますが、それが自立神経の乱れに繋がることがあります。自律神経が乱れると寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりといったことが起こり、これが睡眠不足に繋がります。以前から睡眠時間が短いと糖尿病になりやすいことが知られています。またメラトニンが不足する事で糖尿病の発症率が高くなるという研究(a)が報告されています。
「○○の秋」で一番有名な食欲の秋。今でこそ、どの季節にいってもほぼ全種類の野菜が揃っている というスーパーでの当たり前の景色は昔では「あり得ない事」でした。その時期に採れた食材は、その時期のうちに美味しく食べる というの状況で、まさしく実りの秋そのものです。夏は暑く、食欲が低下しがちなので、採れるものが多くなる分、食欲も刺激され、食べられる物も増え、「食欲の秋」が定着したわけです。
昭和の戦後から平成にかけ「働きすぎ」と指摘されてきた日本人の平均睡眠時間は7時間43分と言われ世界主要国29ヵ国の中で28位と世界平均から1時間30分以上も短い結果でした。
もう少し細かく見てみると、健常児の夜間睡眠時間は10代前半では8時間、25歳で約7時間、その後、20年経った45歳で平均6.5時間、さらに20年経って65歳になると約6時間、と言うように、成人してからは、健康であっても20年ごとに30分程度の割合で睡眠時間が減少していくことが認められています(2)。
睡眠と耐糖能(≒インスリンの効き具合)の関係についてまとめますと
睡眠時間の極端な短縮や睡眠の質的悪化は急性にインスリン感受性に関連した耐糖能の悪化をもたらす事が知られていますが、これは睡眠不足の解消で回復するとされています。軽度の睡眠不足が続くと耐糖能の低下が見られるものの代償的な回復も生じ得る(3・4)。疫学的に短時間睡眠が糖尿病発症のリスク要因とされますが、睡眠時間の極端に長い群でも糖尿病発症リスクが高まることから、7時間前後の適切な睡眠時間が必要である(5)とされています。
睡眠時間を確保するための対処法として、フランスの企業イケアは「眠れない人々に休憩を」と自転車で牽引する移動式シエスタ箱を作った という報道も過日にありました。また超短期での休息で仕事の効率を上げる為、コーヒーを使った休息方法(コーヒーナップ)も注目されだし、日本の都心部にはいくつか店舗もできているようです。
もっと手軽にできる手段として、日中に日が当たる道を15~30分程の散歩で太陽光を浴びる事です。
また、
○部屋の中でもカーテンを開け太陽光をとりこむ事。
○寝る1時間前にはスマホを切ること・軽いストレッチ等で身体をリラックスさせる事
も有用とされます。
1) Ciaran J McMullan et al:JAMA. 2013 Apr 3;309(13):1388-96.
2) Maurice M Ohayon et al:Sleep 27:1255-73.2004
3) Sirimon Reutrakul et al:Chest.152:1070-1086. 2017
4) Rachel P Ogilvie et al:Curr Diab Rep 18:82 2018 doi: 10.1007/s11892-018-1055-8.
5) 小曽根基裕 他:不眠・睡眠不足と糖尿病 月刊糖尿病12:22-28 2020
しんかなクリニック 内科・糖尿病内科
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