しんかなクリニック

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体重減らなくなってきた貴方へ

Diabetes

体重がなかなか痩せない (特に65歳未満の) 方へ

糖尿病の方を始め、生活習慣病を指摘されたほとんどの人が食事の摂取量に何かしら注意をされているかと思います。食事量の調節や運動をしてもなかなか体重が痩せず肥満から抜け出せない、また血糖値の下がりも今ひとつしっくりこない といった悩みの患者様がいらっしゃいます。

令和2・3年は新型コロナウイルス感染症の影響により国民健康・栄養調査は中止となり、現状の最も新しい令和元年に行われた「国民健康・栄養調査」の結果では肥満者(BMI≧25 kg/m2)の割合は男性33.0%、女性22.3%であり、この10年間でみると、女性では有意な増減はみられない一方で男性では平成 25 年から令和元年の間に有意に増加している と報告され、糖尿病の発症有無とは別に(特に男性で)肥満傾向が認められてきております。

 

一方で、近年は「健康に老いる」ために健康寿命を延ばすことが注目されています。このため、フレイル(虚弱)の予防と生活習慣病の予防を同時に行っていく必要があります。 (日本人食事摂取基準2020)によると、65歳以上の高齢者のBMIの値は21.5から24.9とされています。近年の疫学調査では国内外を問わず、65歳未満ではBMIは厳格に22に管理すべき と考えられている一方、65歳以上では低すぎても、高すぎても「寿命を縮める」可能性があると言うことが示されています。

なぜ太るのか

「太る」というメカニズム自体、完全に解明出来ていませんが、本来、身体に入ってくるエネルギーと身体で消費したエネルギーのバランスが取れている場合、体重は大きく変化しません。摂取したエネルギーと消費したエネルギーのバランスが崩れてしまう理由は、大きく3つ考えられています。
1つめ)加齢の影響 で筋肉量が減少(高齢者では蛋白質摂取不足の傾向)
25〜30歳あたりから大きく筋肉量が落ちだし、60〜65歳にかけて加速度的に筋肉量が減ることが判明しています。原因として複数の要因が重なっているようで、筋肉を覆う筋膜や他臓器から発生される何らかの物質(ホルモン)が関与しているとされていますが、詳細なメカニズムはまだわかっていません。
筋肉量の減少を抑えるためには、筋肉量の維持・増大が必要であり、そのために食事で良質な蛋白質を摂取する必要があります。筋肉質が不足すると、高齢者は筋肉が衰えフレイルに陥りやすく、運動・認知機能が低下しやすくなります。蛋白質の不足を防ぐために日本国内はもとより世界的に、食事ガイドラインの見直しが行われています。海外でも高齢者の蛋白質摂取の不足は課題になっており、英国バーミンガム大学からの報告で、同バーミンガム地域の在住者120人を対象に、食生活について参加者を3つの年齢層(若年者:平均年齢は23歳、中年者:同51歳、高齢者:同77歳)に分け、各40人について3日間の食事日記をつけてもらい、摂取したすべての食品を量る横断的調査を実施した所、各年齢層の平均タンパク質摂取量は、若者105.1g、中年者97.0g、高齢者83.4gとなり、高齢者になる程、蛋白質の摂取量が減っている事・とくに高齢者では朝食と昼食でのタンパク質摂取量が基準以下(昼食にパンのみを食べる等)で、若年者や中年者に比べ蛋白質摂取が不足している傾向が示されました(筋肉減少→肥満になる理由は下記)。

2つめ)消費エネルギーが減ってしまう=運動不足
最も効率が良いエネルギー源として知られている血液中の糖質の20%近くを肝臓が消費し、グリコーゲンとして貯蓄する一方で、残りの約80%は筋肉(主に骨格筋)によって取り込まれ一部は貯蔵されますが多くは消費されます。筋肉1日1kgあたり13 Kcalを消費すると考えられています。
また、骨格筋は基礎代謝を生み出し安静時の総エネルギー消費量の約23%を占めているとされます。活動時のエネルギー消費を含めると、人体の総エネルギー量の30から40%に達します。

運動が減ってしまうと筋肉量も少なくなり、結果的に全身の糖消費量が落ちこんでしまう原因になります。また、糖質の摂りすぎによって肝臓の入り口の血管である門脈のインスリン濃度が高い状態が続くと、肝細胞の中に中性脂肪がたまる脂肪肝の状態になってしまいます。脂肪肝の状態になると、肝臓の繊維化が進み、慢性肝炎から肝硬変、場合によっては癌が出てくる事があります。
2型糖尿病の要因は、インスリン分泌低下と肝臓や肥満などのインスリン抵抗性の2つですが、3つ目の要因として筋肉減少が注目されだしています。筋肉を維持するために効果的なのは、蛋白質を十分に摂ることと、運動を習慣として続けることになります。

3つめ)食べ過ぎ=過食
身体の許容量を上回る栄養素(カロリー)が体内に入り続けると、余剰の栄養素を中性脂肪→脂肪組織に変えて身体に貯蔵していくことになります。これは元の栄養素の種類;糖質やタンパク質、脂質の種類を問わず、余剰分の全てで同じことが起きます。
もちろんエネルギー源として中性脂肪が貯えられ、増えた脂肪組織も代謝が行われます。しかし消費エネルギーは1日1kgあたり4.5キロカロリーしか消費しません。筋肉の基礎代謝量(上記)と比べてもカロリー消費の不足は明らかです。過剰なエネルギーに反応して増えるのは、内臓脂肪だと言われています。ただし、性差もあり女性の場合は内臓脂肪よりも皮下脂肪が溜まりやすいと考えられています。

上記理由から、特に「若い時の食事量のまま」過ごされると、身体の変化と相まって相対的にカロリーオーバーとなってしまう方が多い現状です。

太っているだけで問題無いは本当に大丈夫か

肥満はあっても、採血検査での血中のコレステロール値をはじめとする代謝異常を来していない者を英国では「代謝的に健康な肥満(metabolically healthy obesity: MHO)」と呼ばれることがあります。この集団が“実際に"健康であるかどうかを調べた英国内の一般集団を対象とした前向きコホート研究の結果がUK Biobank※から報告されました。

UK Biobankに2007〜10年に登録された、元々の低体菫ではなく身長・体重、血中マーカーの完全なデータを有する381363例を対象としたBMl;30以上の方を肥満に分類、①血圧(収縮期血圧<130mmHg/拡張期血圧<80mmHg かつ 降圧薬の定期内服がない人)
②CRP(<3mg/L)、③トリグリセライド(<2.3mmol/Ll) 、④LDLコレステロール(<3mmol/Lかつ脂質低下薬の定期内服がない人)、⑤HDLコレステロール(>1mmol/L) 、⑥HbA1c(<6%かつ糖尿病治療薬の定期内服がない人)の6項目中、4項目以上を満たす者を代謝的に健康と見なし、対象者をBMI:30未満 または 以上 に各振り分けた4群、つまり
○代謝的に健康な非肥満者(MHN) 群 ○代謝的に健康な肥満者(MHO) 群、
○代謝的に不鑓康な非肥満者(MUN) 群 ○代謝的に不健康な肥満者(MUO) 群
に分け、Cox比例ハザードモデルを用いて健康アウトカム[全死亡、糖尿病(2型糖尿病) ASCVD(致死性虚血性心疾患、非致死的心筋梗塞、致死性/非致死性脳卒中)、心不全、呼吸器疾患]との関連について全参加者381363例を11.2年にわたり追跡した結果、MHOはMHN に比べて糖尿病やASCVD、心不全、呼眼器系疾患、全死亡のリスクが高いことが示されました。
論文著者はこの結果から「健康な肥満というものは存在せず、代謝プロファイルに関わらず肥満を有する全ての者に対しての体重菅理は、全死亡やASCVDなどの抑制の観点から有益と考えられる」と述べています。

 ※UK Biobank研究)遺伝的素質やさまざまな環境曝露が疾患に対して与える影響を調査する、イギリスの長期大規模研究で2006年から調査開始※

(太らないために)しっかりとした睡眠時間の確保と睡眠環境の設定を

糖尿病を始め肥満のある方に対し、食事療法を行なって体重を「減らす」だけ、だと脂肪分と同時に必要な筋肉も落ちてしまうケースが多く、長い目で見るとプラスにならないとされています。
皆様の睡眠の「時間」と「寝る環境」はどのような状況でしょうか。

世界疾病負担調査(Global Burden of Disease=GBD)の結果ではに,2015 年時点で世界には 6 億 370 万人の成人が肥満であること,高BMIによる死亡原因の第1位と第2位はそれぞれ心血管系疾患と糖尿病とされています。睡眠不足と治療介入されていない睡眠障害は糖尿病・肥満のリスク因子といわれています(Depner CM. et al. Curr Diab Rep. 2014: 14: 507)。具体的には、睡眠不足が、エネルギー摂取の増加や体内の概日リズムの遅延など、代謝調節不全に関係するいくつかの行動的および生理学的プロセスを変化させ、体重増加とインスリン感受性の低下をもたらすとされています。

昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけにリモートワークが急速に広まり、そのメリットを生かした新しいライフスタイルが浸透しつつあります。コロナ禍を機に遠隔地への移住ができたり、ワーケーションといった今までにない働き方の実現にリモートワークが有用になった一方で、WEB会議やフルリモート勤務などは、従来以上にPC画面を注視し過ぎる状況に陥りやすく、体内の概日リズムの遅延が生じやすい状況です。

「しっかり睡眠時間を確保する」ことの重要性は、既にいろいろな書籍やメディア各所で議論がなられており、厚生労働省健康局から「健康づくりのための睡眠指針 2014~睡眠12箇条~」も出されています。ただ、実際問題として仕事の日々は慌ただしく、なかなか取れない疲れの中、ようやく「明日は待ちに待った休日。まずは好きなだけ眠って日頃の睡眠不足を解消しよう……」そんな休日の「寝だめ」を楽しみに過ごされる方は決して少なくない と思います。
休日の間に「好きなだけ」睡眠時間を取得することについては以前から賛否両論がありました。これに対しての影響を調べた報告(Depner CM. et al. Curr Biot.2019: 29: 957−967) をご紹介します。

成人男女の健常人の男女36人を対象に3つの睡眠パターンを行う群(① 9時間睡眠を9日継続 ②5時間睡眠を9日継続、③5時間睡眠を5日→週末(2 日)に好きなだけ睡眠→その後5 時間睡眠を再度2日)に割り付け、各群において男女比が同等になるように振り分け、全被験者のエネルギーバランスが等しくなるようにコントロールされ、試験開始後は自由に食事をとれるようにデザインされていました。試験開始から3 日目までは全群で9時間睡眠を実施、4日目から9日間(12日目)にわたり、各群で指定された睡眠パターンを実践しました。4日目と12日目にインスリンクランプ試験で肝臓・筋肉のインスリン感受性に与える影響について検討を行ないました。9日間の観察の結果、睡眠時間が充足していた①以外の群においては夕食後のエネルギー摂取量と体重増加に有意差が認められました(p <0.05) 。③の群では週末の睡眠時間増加により1 日ならびに夕食後のエネルギー摂取量は減少するものの、5時間睡眠に再び戻ると、エネルギー摂取量が増加してしまっていました。また週末の自由睡眠取得前よりも、全身および肝臓と筋肉のインスリン感受性が低下していることも報告されました。
少なくとも糖尿病をお持ちの方とっては週末に寝だめをしても睡眠不足が解消する事にはならないことが本研究より示唆されています。
これを機会に一定時間のまとまった睡眠時間をとる事が、体重是正の第1歩となるかも知れません。

また、寝る時は部屋の明かりも注意が必要です。「真っ暗なのが苦手」だったり、「疲労でそのまま寝落ちしてしまう」等のいろいろな理由で電灯を つけたまま 寝てしまった経験は誰しもあるはずです。このような「就寝時に光を浴びる」事についての影響を調べたノースウエスタン大学からの報告があります(Ivy C. M et al. PNAS 2022:119:12.e2113290119)。

若い20人の被験者を中程度(100ルクス=一般的な室内灯の全灯状態に相当)の光の元で寝る群と薄暗い(3ルクス=ロウソクの光よりも暗く月明かりよりもわずかに明るい程度)の元で寝る のいずれかの室内環境で寝てもらう2群間での比較研究で、それぞれの室内環境で一晩寝てもらったところ、中程度の光の中で寝た人は、薄暗い光の中で寝た人よりも心拍数と血糖値上昇、また高インスリン血症が認められ、また両群の被験者が報告した睡眠の質には違いがないものの、中程度の光の中で寝た人ほど、レム睡眠の割合が少なかったことも判明しました。
これは明るい光の下で寝ると心拍数の上昇などを引き起こし心臓病や糖尿病のリスクを増加させる可能性があることを示唆しています。同様の理由から、入眠直前までPC作業を行ったり、スマホの確認をする事も、極力避けた方が良いとされています。
(どうしても避けられない場合、ディスプレイ画面の色調調節等は元より、最低でも液晶の明るさを下げる必要があると思います)

(太らないために)筋肉量を増やすための運動内容について

糖尿病を始め肥満のある方に対し、糖尿病予防段階からいざ治療 に至るまで、食事療法と同時に筋肉量を増やし、それを使う運動療法も非常に重要になります。

筋肉量が多いほど糖を貯蔵でき、また運動により多くの糖を消費することができ血糖を下がりやすい身体に変化します(上述)。糖尿病の予防や治療には、筋肉量を増やし、筋肉を動かすことが必要です。

筋肉は何歳からでも鍛えられると言う特徴があります。デンマークからの報告では97歳でフレイルの状態であっても、専門家のもとで正しい筋肉トレーニングをすれば筋肉が鍛えられることがわかっています。またボストン大学からの報告によると、10分程度の軽い身体活動であっても、体重を減らすことができるだけでなく、血糖値を下げる効果がある等心血管疾患の予防に効果があることがわかっています。

筋肉(骨格筋)がエネルギーを消費するときは、運動の強度により、激しい運動(例えばジョギング等)の際には、すぐにエネルギーに変えられる筋肉に蓄えられているグリコーゲンを最初に使いだす一方、日常生活でもあるウォーキングなどの軽い運動の際には、代謝が複雑な中性脂肪が優先的に使われる等、最初に使うエネルギー源が分かれていることが判明しました。
身体に付いた「体脂肪を減らすだけ」なら無理をしない日常的な身体活動を増やすのも痩せる一助となります。各個人毎に解決法は大きく異なります。

当院には診療所内に体組成計であるInBody770を備えております。一度ご自身の体の内訳をみて、病気の予防するために身体をチェックしませんか。

糖尿病をお持ちの方・食後に血糖値が高くなるような方で、血糖値を下げる目的に於いての運動療法について>
※頻度)できれば毎日の運動、少なくとも週3日
※時間)1回あたり20〜60分、1週間150分以上
※行うタイミング)1日の間でいつ行っても構いませんが、食後1~2時間頃に運動を行って頂くと効果的で推奨されています。
1型糖尿病の方、血糖値を下げる薬を使っている方は、運動により低血糖にならない時間帯を選ぶことが重要です。
その運動療法には、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」があります。

有酸素運動

有酸素運動は、大きい筋肉を使って行う全身運動で、インスリン感受性の増大が主な目的となります。そのため、エネルギー消費は多くありません。
有酸素運動は、いつでも、どこでも、できれば毎日できるものがおすすめです。
例えば、ウォーキングやサイクリング、階段の昇り降りといった身近な運動も有酸素運動です。
運動の強さは、「楽である」「ややきつい」といった体感を目安に、運動時の脈拍数を100〜120拍/分以内に留めてください。
歩行運動では1回15分~30分以上で、1日2回できるだけ毎日行ってください。

実は、運動で消費するエネルギーは多くありません。各運動種類別に見た1分間消費エネルギー量「単位は(kcal/kg/分)」は別図で、消費したエネルギー量(kcal)=1分間のエネルギー消費量(kcal/kg/分)×体重(kg)×持続時間(分)×補正係数で算出出来ますが、自身が「感じる」よりもカロリーの消費は少ないのが現状です。

※日本体育協会スポーツ科学委員会の資料より

 

 

例えば、運動の後にアイスクリーム1カップを食べると、それを消費するためには60分以上のウォーキングをしなければなりません。そのため、運動をした後で「お腹が減ってしまい間食」をすると運動が無駄になってしまいます。このため血糖コントロールにおいては運動療法で消費カロリーを減らす よりも 間食を控える・食事量を減らす;といった食事療法が有効とされます。

レジスタンス運動

レジスタンス運動は、筋肉量の増加と筋力の増強が主な目的となります。 重りや、抵抗負荷に対して動作を行う運動です。ダンベル、スクワット、マシン運動などがレジスタンス運動として挙げられます。

グルコーススパイク(別名:ジェットコースター血糖)について 

「糖質制限」という言葉は聞いたことが多いかと思いますが、「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」という言葉をご存知でしょうか?グルコーススパイクとは、糖質の過剰摂取により、血糖値がジェットコースターのように急上昇・急降下することを示し、ジェットコースター血糖とも呼称されるものです。
糖質の多い食事を摂ると、血液中のブドウ糖濃度=血糖値が急上昇します。それを下げるために膵臓よりインスリンが大量に急激に分泌される事で血糖値が急降下します。そうなると、瞬間的に軽い低血糖状態になり、空腹を感じ食べたり飲んだりしてしまうといったことが起こります。日々感じる疲労感やイライラなど、このジェットコースターのような血糖変動が関係している可能性があります。

通常、血糖値は体内のホルモンによって調整され一定の範囲内に保たれています。しかしホルモンの分泌均衡が崩れ血糖値の調節障害が起きる状態(血糖調節障害)が出ると、血糖値に変動が起き、通常では感じないような倦怠感・けだるさが出ることがあります。
食事をした後に急激に我慢できないような眠気に襲われたり、だるくなってしばらく横になることはあったりしますか?
ほとんどの場合「急いで食べたから」「暖かい部屋にいたから」等の理由が何かしら該当し、その症状を、すぐに病気と結び付ける事はあまり無いと思います。特段問題ない人なら、その症状は一時的で続かないですが、慢性的(1ヶ月以上〜)に体調不良が続いている人や食後の倦怠感が毎回、決まった時間にある という人は「低血糖症」に陥っていないか疑ってみる必要があります。

低血糖症の症状には、食後のだるさだけではなく発汗や頻脈・動悸、不安感やイライラなどがありますが直接的に死に至るものはない事から軽く考えられがちですが、頻繁に起こる場合は生活に支障が出てしまいます。そしてその症状の陰には、身体全体に関わる大きな問題が隠れていることが多くあるのです。

主に症状が 食事に関係なく起きるか もしくは食事前後で起きるか で大きく2つに分かれます。

○食後からかなり経った夜間や空腹時に生じる倦怠感やだるさ→慢性的に血糖が低い「無反応型」の低血糖→ストレスホルモンの分泌不良(副腎機能低下症ないし副腎機能不全)が疑われます。
これに関しては基幹病院でのホルモン検査を行なって頂き、場合によっては短期入院での精査→内服加療が必要になる事があります。

○食後に一定の時間が経ったときに急激に感じる倦怠感やだるさ→「ジェットコースター型」の血糖変動→反応性低血糖が疑われます。これは食事をした後に血糖を下げる機能がうまく働かず、通常以上に血糖が上昇することで引き起こされるものです。このジェットコースターのように激しく血糖値が上下すると、血管内部の糖質により血管の内側がやすりのようにこすられる事で血管が傷つき、ダメージを受け、動脈硬化を起こす引き金になります。

【グルコーススパイクの発生危険度チェック】 以下の質問の中から、当てはまる項目はありますか。
・朝食を食べないことが多い
・パンや白米や麺類が大好き。菓子パン摂取がある
・缶コーヒー、ジュースなどの甘いドリンクをよく飲む
・昼食にパスタやラーメン、丼ものなどの炭水化物が多めの食事が多い
・昼食の後に、眠気に襲われる事がある
・飲み会の後、締めのスイーツ・ラーメンを食べてしまう
・歯周病がある
・イライラを感じる事が多い・疲れが取れない
・糖質制限ダイエットで炭水化物だけを抜いている
・野菜をあまり食べない
チェックが5点以上ある場合、血糖値が上下するリスクが高い状態です。
食生活が原因で起こる血糖変動(ジェットコースター血糖)を改善するには、まず食生活を見直すことがとても大切です。糖質を控えめにし、血糖値の変動をゆるやかにするなど食生活の改善を心がけましょう。

「人生100年時代」における血糖 (食後高血糖)コントロールの重要性

「人生 100年時代」は、超高齢化社会である日本を象徴する言葉として、様々なメディア・YouTubeやTVCMでも流れるようになって久しい言葉です。国内での種々の治療技術の革新もあり、2型糖尿病をもつ患者さんの平均年齢は62.23歳(2006年)→66.59歳(2020年)と、14年で約3.5年も平均年齢が延びており(JDDM:2021年度基礎集計資料)、糖尿病を持たない人の差も徐々に縮まってきています。
“高齢”という言葉から連想されるものの1つに“認知症”が挙げられます。糖尿病は認知症の危険因子であること、また重症低血糖が認知症のリスクを高めること、は以前から複数の報告がありましたが、高齢の糖尿病患者さんの認知機能を守るために“食後高血糖”の管理も重要であることがアメリカのジョン・ホプキンズ大学より報告(A M. Rawlings, et al .Diabetes Care 2017;40(7):879–886)されました。

ARIC研究の参加者12996名(含:非糖尿病患者11284人)を対象に、20年間にわたり認知機能と血糖コントロール・食後高血糖(1,5-Anhydroglucitol→1,5-AG値の低下=血糖変動が大きいと判断できる物質)の関連について検討した結果、糖尿病の患者さんでは食後高血糖が上昇する事と認知症発症リスクの間に相関関係が認められました。 ※1,5-Anhydroglucitol→1,5-AG:国内での基準値;14.0μg/mL以上

 

 

現時点での医学では糖尿病は完治が難しく、人生を全うするその日まで糖尿病とのお付き合いは何らかの形で続きます。加齢による認知機能の低下は食い止められない部分もありますが、低血糖、そして食後高血糖を防ぎながら、HbA1c7%未満を達成するための血糖コントロールが「人生100年時代」の糖尿病診療に求められているのではないでしょうか。

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