糖尿病を始め肥満のある方に対し、糖尿病予防段階からいざ治療 に至るまで、食事療法と同時に筋肉量を増やし、それを使う運動療法も非常に重要になります。
筋肉量が多いほど糖を貯蔵でき、また運動により多くの糖を消費することができ血糖を下がりやすい身体に変化します(上述)。糖尿病の予防や治療には、筋肉量を増やし、筋肉を動かすことが必要です。
筋肉は何歳からでも鍛えられると言う特徴があります。デンマークからの報告では97歳でフレイルの状態であっても、専門家のもとで正しい筋肉トレーニングをすれば筋肉が鍛えられることがわかっています。またボストン大学からの報告によると、10分程度の軽い身体活動であっても、体重を減らすことができるだけでなく、血糖値を下げる効果がある等心血管疾患の予防に効果があることがわかっています。
筋肉(骨格筋)がエネルギーを消費するときは、運動の強度により、激しい運動(例えばジョギング等)の際には、すぐにエネルギーに変えられる筋肉に蓄えられているグリコーゲンを最初に使いだす一方、日常生活でもあるウォーキングなどの軽い運動の際には、代謝が複雑な中性脂肪が優先的に使われる等、最初に使うエネルギー源が分かれていることが判明しました。
身体に付いた「体脂肪を減らすだけ」なら無理をしない日常的な身体活動を増やすのも痩せる一助となります。各個人毎に解決法は大きく異なります。
当院には診療所内に体組成計であるInBody770を備えております。一度ご自身の体の内訳をみて、病気の予防するために身体をチェックしませんか。
糖尿病をお持ちの方・食後に血糖値が高くなるような方で、血糖値を下げる目的に於いての運動療法について>
※頻度)できれば毎日の運動、少なくとも週3日
※時間)1回あたり20〜60分、1週間150分以上
※行うタイミング)1日の間でいつ行っても構いませんが、食後1~2時間頃に運動を行って頂くと効果的で推奨されています。
1型糖尿病の方、血糖値を下げる薬を使っている方は、運動により低血糖にならない時間帯を選ぶことが重要です。
その運動療法には、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」があります。
有酸素運動
有酸素運動は、大きい筋肉を使って行う全身運動で、インスリン感受性の増大が主な目的となります。そのため、エネルギー消費は多くありません。
有酸素運動は、いつでも、どこでも、できれば毎日できるものがおすすめです。
例えば、ウォーキングやサイクリング、階段の昇り降りといった身近な運動も有酸素運動です。
運動の強さは、「楽である」「ややきつい」といった体感を目安に、運動時の脈拍数を100〜120拍/分以内に留めてください。
歩行運動では1回15分~30分以上で、1日2回できるだけ毎日行ってください。
実は、運動で消費するエネルギーは多くありません。各運動種類別に見た1分間消費エネルギー量「単位は(kcal/kg/分)」は別図で、消費したエネルギー量(kcal)=1分間のエネルギー消費量(kcal/kg/分)×体重(kg)×持続時間(分)×補正係数で算出出来ますが、自身が「感じる」よりもカロリーの消費は少ないのが現状です。
※日本体育協会スポーツ科学委員会の資料より
例えば、運動の後にアイスクリーム1カップを食べると、それを消費するためには60分以上のウォーキングをしなければなりません。そのため、運動をした後で「お腹が減ってしまい間食」をすると運動が無駄になってしまいます。このため血糖コントロールにおいては運動療法で消費カロリーを減らす よりも 間食を控える・食事量を減らす;といった食事療法が有効とされます。
レジスタンス運動
レジスタンス運動は、筋肉量の増加と筋力の増強が主な目的となります。 重りや、抵抗負荷に対して動作を行う運動です。ダンベル、スクワット、マシン運動などがレジスタンス運動として挙げられます。