(当院は18歳以上の方が通院対象です 18歳未満の方で糖尿病が疑われる場合は、速やかに当該の医療機関を受診してください)
糖尿病は高齢者ばかりの病気ではなく、最近では10代・20代などの若い世代にも増えているとされています。元より日本人はインスリンの分泌量が少なく、糖尿病になりやすい体質といわれています。また糖尿病は、運動不足やストレスなど、ライフスタイルの乱れによって年代に関係なく発症する可能性が高い病気です。ライフスタイルの変遷がおき食事の欧米化が進み、甘い食べ物や飲み物は元より、ごはんよりも麺類やパンなどの炭水化物の摂取量の増加/種類の変化、また幼少期からの運動量/筋力量の経時的な低下も若年発症の2型糖尿病が増えてきている遠因の一つ、と言われています。
肥満は運動不足と並んでインスリン抵抗性の主要な原因です。しかし過体重=肥満ではありません。脂肪量は少なくても筋肉量が多いために体重が重い人もいます。逆に、筋肉量が少なく、脂肪量は多いために見た目はスッキリしている人もいます。本当の肥満者=脂肪量が過剰な人で、実は見た目で判断が出来ない事が往々にしてあります。
例えば低体重の人で「体格を良くしたいから」と言って食事を増やし体重が増加した結果、筋肉量は変化せず、脂肪量のみが増加していれば、代謝的に良いこととは言えません。従って体重だけでなく体組成も評価することは、糖尿病診療においては非常に重要な点ではないかと思います。 これまでのインスリン感受性と体組成検査に関する検討から、インスリン感受性には体脂肋量と体筋肉量の両方が関与し、体脂肪量と四肢筋肉量はそれぞれ独立したインスリン感受性関連因子とされています。また最近の検討では、体脂肪量や四肢筋肉量といった単独項目より、骨格筋指数(SMI : Skeletal Muscle Mass Index)と全身脂肪量指数(FMI : Fat Mass Index)=【全身脂肪量(FM : Fat Mass)÷<身長(m)×身長(m)>】の比率:M/F比が最も相関性が高い という報告がありました。
また、若年者での糖尿病発症は、それだけ糖尿病合併症の発症にも注意が必要です。中でも、糖尿病網膜症については、眼科医の元での正確な評価・加療が長期的な視力保持に直結します。糖尿病網膜症の進行速度は人によって様々で、血糖コントロールが良好な人は発症しても進行が遅く大きな問題にはならないですが、ひとたび増殖網膜症の段階になると血糖コントロールが良くても網膜症が進行することがあります。また若年層(40~50歳以下)は進行が速く、特に注意が必要です。
糖尿病網膜症のリスク因子としては高血糖以外にも糖尿病網膜症はさまざまな全身因子:血糖値(高・低血糖いずれもリスク)、高血圧、脂質、腎機能(微量アルブミン尿の増加)、妊娠や身体活動量・座位時間、喫煙の有無と関連して発症・進行が認められるとされています。
よって内科と眼科・婦人科などそれぞれの専門診療科と密に連携し,それぞれのリスク因子に対する治療内容,状況を把握し,適切な是正を目指すことが求められるとされています.
●高/低血糖
糖尿病罹病期間が長いほど,糖尿病網膜症の有病率と重症度はともに上昇する事が知られています。Japan Diabetes Complications Study(JDCS)にて、糖尿病罹病期間が5 年以上経過すると糖尿病網膜症の発症のリスクが高くなることを報告しています。
また,糖尿病網膜症発症時の年齢も重症度に影響し,発症年齢が若いほうが糖尿病網膜症は重症化しやすいとされています。また他人の介助を要するような重症低血糖は,糖尿病網膜症の発生率を約4 倍に増加させるという我が国の報告があります。
●高血圧
血圧は糖尿病網膜症の重要なリスク因子であり,特に収縮期血圧との関連性が強いとされます。収縮期血圧が10 mmHg 上昇すると初期の糖尿病網膜症のリスクが10%,増殖糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫のリスクが15% 上昇するとされている報告や、視力がおびやかされるような重症糖尿病網膜症については,脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)も重要なリスク因子であることが判明しています。このため血圧のコントロールは,糖尿病網膜症の発症・進展の抑制に効果を示す可能性があり、眼科の定期診察の際には血圧にも留意し,内科医と連携を取ることが望ましいとされています。