適切なエネルギー量に調整して、栄養バランスのとれた食事をしましょう
糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの不足や欠乏から発症する病気で、このインスリンは食事と密接な関係にあります。
血糖値を上昇させうる糖質を含有する食べ物は、消化酵素などにより最終的にブドウ糖に分解され、小腸から血液中に吸収されます。そして、血液中のブドウ糖濃度が増加(=血糖値が上昇)してくると、すい臓のベータ細胞からインスリンが分泌され、その働きによってブドウ糖は肝臓及び全身の筋肉などの各細胞へ送り込まれ、エネルギーとして消費されます。
しかし、インスリンが不足するとこの働きが低下し、体の各細胞が栄養不良となり体重減少へと繋がっていきます。一方で、消費されないブドウ糖は血液中にどんどん増え続け、持続的な高血糖の状態となります。この状態を放置すると糖尿病を発症し、様々な合併症が起きてきます。
こうした状態を防ぐため、65歳未満でBMIが25以上の肥満がある方については食事の量を調整し、健康的な生活を送る上で各種栄養素も不足しないよう「食事の摂り方」を変えていく必要があります。一方、肥満を認めない方・65歳以上の方については充分な栄養を摂るため、上記とは異なるアプローチが提唱されるようになりました。
超高齢化がさらに加速するわが国では、糖尿病患者に占める65歳以上の割合は実に7割にも達します。高齢者糖尿病に対する治療やケアでは、身体機能や認知機能の低下から、筋力が減少した状態であるサルコペニアなどのリスクを考慮する必要があります。サルコペニアの発症・進展を防ぐには、レジスタンス運動に加えて十分なエネルギー、特にたんぱく質の摂取が重要とされます。
海外でも高齢者の蛋白質摂取の不足は課題になっており、英国バーミンガム大学からの報告で、同バーミンガム地域の在住者120人を対象に、食生活について参加者を3つの年齢層(若年者:平均年齢は23歳、中年者:同51歳、高齢者:同77歳)に分け、各40人について3日間の食事日記をつけてもらい、摂取したすべての食品を量る横断的調査を実施した所、各年齢層の平均タンパク質摂取量は、若者105.1g、中年者97.0g、高齢者83.4gとなり、高齢者になる程、蛋白質の摂取量が減っている事・とくに高齢者では朝食と昼食でのタンパク質摂取量が基準以下(昼食にパンのみを食べる等)で、若年者や中年者に比べ蛋白質摂取が不足している傾向が示されました(筋肉減少→肥満になる理由は別記記事を参照下さい)。
このような報告・背景から、日本糖尿病学会において2018年11月に食事療法に関するシンポジウムが開催され、最新のエピデンスや関連学会からの意見を踏まえ、2019年10月に糖尿病患者・特に高齢糖尿病患者の食事療法に関する考え方が新たに発表されました。