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健診で指摘される肥満・肝機能異常について

当ホームページをご覧のみなさまへ。
こんにちは。スギ薬局新金岡店2Fにある内科・糖尿病内科のしんかなクリニック 院長の片岡です。
新年1回目のブログ投稿をさせて頂きます。

 
本日は 通院中の方は元より、初診の健診異常で来院された方で良く聞かれる質問の一つとして「(BMI25以上で)太っているのは不健康なの?肝臓の数値の異常(AST・ALT高値)はそんなに危ないの?」というものがありますので、これに関するお話を中心としたお話をさせて頂きます。
目次
  • はじめに 
  • 肝機能異常によりインスリンの効きが悪くなる(特に男性)
  • 肝機能異常に対しても日本発の悪玉コレステロール是正薬:スタチンが効く?
  • 最後に
はじめに;65歳未満ならBMI<25を目指しましょう

いきなり答えを書いてしまい恐縮ですが、肥満によって気づかない間に身体にダメージを与えている可能性がある以上、「健康な肥満」というのは世の中に存在しません。太っていても(特に国外では顕著ですが)現時点では健康に過ごされている方も確かに多くおられます。HPの別記事「太っていたら問題がある?」に詳細を記載しておりますのでここでは手短に書きますが、まず、重くなってしまった身体を支える必要から、骨や関節が痛み易い状態になる事に変わりはありません。大きくなってしまった身体に血液をいきわたらせるために以前よりも心臓に負荷・負担がかかります。さらに怖いのは、糖尿病を始めとした生活習慣病の合併:特に肥満は生活習慣病の発生リスクを高めることが明らかになっています。肥満に対する保険診療もこの数年で広がっていくと考えられています。もし不安を感じられるのであれば生活習慣の改善を検討して頂く必要があります。一度当院へお越し下さい。

近年の疫学調査では国内外を問わず、65歳以上では体重が低すぎても高すぎても「寿命を縮める」可能性があると示されています。これは、近年「健康に老いる」ために健康寿命を延ばすことが注目/注力された結果としてフレイル(虚弱)の予防と生活習慣病の予防を同時に行っていく必要から判断されました。
一方で65歳未満で糖尿病をお持ちの方では慢性腎臓病を防ぐ観点からもBMIは厳格に25以下の22近くで管理すべき と考えられております。

肝機能異常によりインスリンの効きが悪くなる(特に男性)

脂肪肝の入口となる肝機能異常も、それ自体によりインスリン抵抗性が上がってしまう事が国内の研究報告からも明らかになってきております。日本人においては正常体重の人でも、内臓脂肪や肝脂肪の蓄積が認められる人がおり、様々な蓄積パターンがありましたが、特に男性においては内臓脂肪蓄積がなくても、脂肪肝があると筋肉のインスリン抵抗性(代謝障害)を認め、これとは逆に内臓脂肪蓄積があっても脂肪肝がなければインスリン抵抗性が認めなられかった事から、脂肪肝がある人には筋肉のインスリン抵抗性を改善する運動などが推奨される という報告が明らかになっております。

肝機能異常に対しても日本発の悪玉コレステロール是正薬:スタチンが効く?

肥満により肝臓の数値異常から脂肪肝や脂質異常症を指摘され、当院を初診で訪れられる方も何名かおられます。脂質異常症については上昇している項目(LDL-C:悪玉コレステロールかTG:中性脂肪)によって最初に用いる薬剤は変わるのですが、主にLDLーCを下げる力を持つスタチン製剤が脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進展予防に有用であったという海外報告がありました。
 オランダ・Erasmus University Medical Center RotterdamのIbrahim Ayada氏らが、同国のRotterdam Study住民コホートと中国のNAFLD患者集団においてPERSONSコホートの解析を含む多面的研究を行い、NAFLD患者におけるスタチンの有益性と作用機序を包括的に検討した結果をE BioMedicine(2023; 87: 104392)に発表を行いました。同氏らは解析結果を踏まえ、「スタチンはNASHおよび肝線維化のリスクを有意に低減し、代謝機能障害を有する者においてNAFLDを予防する可能性が示された。これらの効果の一部は、スタチンの脂質低下作用および抗炎症作用に起因すると考えられる」と結論付けを行い、「現在、NAFLD患者の40~50%はスタチンの適応がありながら同薬を処方されていない現状にある。最新のガイドラインに従って適切にスタチンを処方することでNAFLDの疾病負担が軽減され、部分的な肝臓の保護につながる可能性がある」としています。

スタチンは1973年に日本の遠藤章らによりメバスタチンという初のスタチンが発見されて以降、様々な種類のスタチンが開発され、高コレステロール血症(LDLコレステロール血症)の治療薬として世界各国で使用されるに至りました。もちろん薬剤開始に伴うアレルギー症状が出ないかの確認は必要ではありますが、血圧や血糖値と異なり、脂質に関しては薬剤で強く低下させた事による自覚症状・不利益となる症状が特に出ない事もあり、動脈硬化を強く抑制する際に最も早く達成が可能な領域でもあります。

最後に

糖尿病を合併している高度肥満者における減量治療として胃のバイパス切除術は先立って保険収載され、一定の方の肥満是正が達成されている一方、開腹術を実施する事に抵抗を感じられる方もやはり多く、肥満是正の達成にはまだほど遠い現状であります。肥満の治療薬は海外で既に使用されていて実績のあるものはありますが、国内での保険診療において肥満に対する治療薬は無いまま経過しております。コロナ禍も3年を超え、そろそろ国(厚生労働省)にも動きを期待したい所です。今ある状態を悪くさせない為に、普段からの備え・早期介入/治療が肝要です。

 追記(2023/02/07)去る1月27日に厚労省の薬食審・医薬品第一部会はノボノルディスクファーマの肥満症治療薬(商品名:ウゴービ皮下注・一般名:セマグルチド)の承認可否の審議にて承認が了承され、2~3月に正式承認されるとみられる との報道が出ました。

糖尿病治療薬として既に使われている薬剤の一つが肥満治療薬として正式に使えるようになるまで、もうしばらくのようです。

 

今後とも、しんかなクリニックをどうぞ宜しくお願い致します。

しんかなクリニック 内科・糖尿病内科

〒591-8025 大阪府堺市北区長曽根町720-1 スギ薬局新金岡店 2F

URL: https://shinkana-cl.com/

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