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2021年はインスリンの発見から100年目の年です。

当ホームページをご覧のみなさまへ。
こんにちは。しんかなクリニック院長の片岡です。
皆様いかがおすごしでしょうか。
今回は糖尿病のお話をさせて頂きます。実は今年は、インスリンが発見されて100年目の節目の年にあたります。
目次
  • インスリンが発見されて100年目
  • 肥満是正を目指した治療アルゴリズムの確立、一方で治療費用を減らしうるバイオ後発品(以下、バイオシミラー)の登場
  • ジェネリック医薬品とバイオシミラーの違い
  • 最後に
インスリンが発見されて100年目
紀元前1500年にパピルスにも糖尿病の症状が記載されるほど、症状は古くから知られている一方で原因が長らく解明されず、「糖尿病は一度発症したら最後、治療法のない不治の病」とされていました。そこから約3400年を経た1889年、犬の膵臓を全摘出した実験後の犬に著しい頻尿が認められました。調べると、犬に重症の糖尿病が発症していることが偶然の産物として発見され、1921年には糖尿病状態にした犬に、犬の膵臓から抽出された液体を投与する事で血糖値が下がるかを調べる実験が行われ、現在の「インスリン」の存在が初めて確認されました。糖尿病の研究そして治療における夜明けの瞬間です。
 
翌1922年に最初のインスリンによるヒトへの治療が行われましたが、当初は動物(食肉加工処理の際に捨てられていた家畜牛や豚)の膵臓(すいぞう)から取り出したインスリンが使われました。採取に手間と時間がかかるインスリン製剤は当初非常に高価でしたが、科学技術の日進月歩によりヒトのインスリンを人工的に大量に生成できるようになり、さらにインスリンの構造を部分的に組み替える事と微量添加剤を加える事で効能時間を(より早く)、また(より長く)効くように作用時間を変えたアナログインスリンへと大きく進化しております。
肥満是正を目指した治療アルゴリズム、一方で治療費用を減らしうるバイオ後発品(以下、バイオシミラー)の登場
近年の糖尿病診療の進歩はめざましく、経口薬としては血管内の糖分を尿へ落とし血糖降下作用をもたらすSGLT2 阻害薬が登場しました。効果発現も早く内服当日から効能を発揮します。また従前のDPP-4阻害薬と合わさった「配合錠」といわれるものも複数種が発売されております。一方、インスリン以外での注射製剤として発売されたGLPー1受容体作働薬では、従来の1日1〜2回注射するタイプ・週1回の注射で可能になった製剤もでておりましたが、1年ほど前から週1製剤でも容量の調節が出来るタイプが、またこの3月には内服薬タイプ(こちらは毎日の内服)も発売されるまでになりました。SGLT-2阻害薬とGLPー1受容体作働薬のいずれも単独使用では機序的に低血糖を起こしにくく、肥満改善に効果が認められている薬剤で、臨床研究では心血管腎疾患の予後改善改善が明らかになり、現在、欧米の糖尿病治療ガイドラインでは、心血管合併症のある場合には第1や第2の選択位置を占めるまでになりつつあります。
一方、インスリン製剤もアナログインスリンの改良版が発売される一方で、既に発売開始から一定期間が経った製品に関しては、後発品(注射製剤においてはバイオ後発品と呼称)が発売されるようになりました。
ジェネリック医薬品とバイオ後発品(以下、バイオシミラー)の違い 
後発品:といえば本邦では1960年半ばに制度の導入が始まったジェネリック医薬品の知名度が高いですが、バイオシミラーとの違いについて少し補足します。

 
>ジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の特許が切れた後に販売が許可される、先発医薬品と有効成分や投与経路や用法・用量、効能・効果が同一の後発医薬品で、開発費が抑えられるため新薬より低価格なのが特徴とされます。承認申請においては「生物学的同等性」が国に示されれば良い低分子化合物です。このため添加剤等のアレルギー発生がどうしても発生しうるのですが、一部医薬品ではオーソライズド・ジェネリック(AG)と呼ばれる、新薬メーカーから許諾を得た上で、先発医薬品と(原薬・添加物・製造方法まで全て)同じ成分のジェネリック医薬品もあります。
 
>バイオシミラー
インスリンやホルモンなど分子量が大きく複雑なものがバイオ医薬品と呼ばれるものですが、バイオシミラーと言う言葉にはなじみのない方もいると思います。バイオは(生命・生物)、シミラーは(類似する)の意味です。バイオシミラーで対象となる成分はジェネリック医薬品よりも分子量が大きく構造が複雑な高分子化合物であり、先行バイオ医薬品との同一性を示すことが困難で、品質・安全性・有効性においては先行のバイオ医薬品との同等性/同質性を検証することが求められます。
 
またジェネリック医薬品の製造を取り扱うメーカーは数多にのぼり、いくつかのメーカーでは製造を巡って様々な不祥事も出てきておりますが、特にインスリンのバイオシミラー開発においては現段階においては同系統のインスリンを製造しているメーカーに限られている事、新薬と同様臨床試験等の多くの試験が行われている事から、安全性には問題ありません。さらにバイオシミラー製剤は先行バイオ医薬品より安価に価格設定がされており、医療財政や患者負担が減る面で有意義と考えられます。
 乱暴な言い方をするならバイオ後発品は「注射製剤のジェネリック製品」とご理解頂いても良いと思われますが、実際にはジェネリック医薬品とバイオ後発品では求められているレベルは一つ以上違います。
 
最後に

インスリン製剤をはじめとするバイオ医薬品の開発により,これまで治療困難で治療法がなかった病気の治療が飛躍的に進歩し,急速にその使用が広まりました。GLP-1受容体作働薬のような便利な新規注射薬剤が出て、他の薬剤との組み合わせにより低血糖が出にくい/体重をより減らすような組み合わせも見いだされました。一方,これら新規薬剤の開発や製造コストは(特に注射製剤は)どうしても薬価が高くなりがちで,結局のところ高額な医療費につながっているのが現状です。

一連の新型コロナウィルス感染症の流行により、置かれた状況は以前よりもさらに多種多様になったように感じます。バイオシミラーは,薬価が先行バイオ医薬品の約8割程度に抑えられるため、新規薬剤と共にバイオシミラーが選択肢の一つとして加わることで,より減量効果を重視される方/日々の治療費を優先される方等、多様な状況下に対する治療の門戸が広がり、より公平な医療へのアクセスが広がっていくことを個人的に期待しております。

今後とも、しんかなクリニックをどうぞ宜しくお願い致します。

しんかなクリニック 内科・糖尿病内科
〒591-8025 大阪府堺市北区長曽根町720-1 スギ薬局新金岡店 2F

URL: https://shinkana-cl.com/

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