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体内からのインスリン自己分泌が弱まると、複数の薬剤を使用しても副作用ばかりが目立ち、血糖コントロールが難しくなります。この場合、インスリン製剤を使用することで、自分の体内からのインスリンを休ませ、血糖コントロールを助けることができます。注射製剤の離脱にはインスリン分泌が回復している事が重要になりますが、回復するかどうかは糖尿病の罹病期間や高血糖の期間により左右されます。血糖コントロールを改善するためには早めにインスリン製剤を導入することが望ましいです。
今年の糖尿病学会でも複数の口頭・ポスター発表がされた本薬剤は、紆余曲折の末にようやく「製造販売承認が取得出来、ノボノルディスクファーマ社より今後発売準備予定」との報道が6月末に出され、メーカーの担当さんがリーフレットを持って当院に来られました。
※メーカーからの公式発表はありませんが、「アウィクリ」という名称については週1回の注射薬剤である事=「a weekly(ア ウィークリー;1週間毎)」にちなんで命名したのかな、と類推しております※
新たに発売予定の週1回投与の基礎インスリン製剤「アウィクリ®注」〔インスリンイコデク(遺伝子組換え)〕は、自己注射が難しい患者さんにとって最初の良い選択肢となり得ます。特に、知的障害や認知機能障害を持つ方や、針等の先端恐怖症のため毎日のペンタイプの自己注射が困難な方に適していると考えられます。介護の現場等で1日1回決まった量のインスリン皮下注射を継続している方に関しても、週1回投与にすることで手間を減じる事が可能になります。
注射方法自体は従来のインスリン製剤と大きく変わりませんが、初めてインスリンを使用される方に関しては(従来の製剤使用時に比べ)手技習得に時間がかかる可能性があります。また、1メモリが10単位刻みの調整となるため、1型糖尿病などを始めとした微細な調節が必要とする患者さんには向かない可能性があります。
それでも、毎日行っていた注射が週1回の注射で済むことで回数を大きく減らせるこの製剤は、血糖コントロールと生活の質を両方を向上させることが期待されます。
インスリン注射製剤そのものの誕生は1922年にまで遡ります。過去には吸入によるインスリン投与等も比較検討されていましたが残念ながら開発中止となり、未だに経口投与が可能になる方法の確立がされていません。同じホルモン製剤であったGLP-1アナログ製剤は毎日の皮下注射から週1の皮下注射発売→ついには経口薬での投与可能となったように、いつしかインスリン製剤も経口投与になる時代が来るのでしょうか。
また糖尿病学会が再来年(2026年)には大阪で開催される予定です。この薬剤が市場に出た後の動向等についてもそこで公表されるのでしょうか こちらも期待をして待ちたいと思います。
今後とも、しんかなクリニックをどうぞ宜しくお願い致します。
しんかなクリニック 内科・糖尿病内科
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