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こんにちは。しんかなクリニック院長の片岡です。
本年夏〜晩秋まで続いた酷暑の影響は甚大で、あまりに続く暑さのためか「当院に来るまでに(ひんけつ)を起こし倒れそうになった」と診察の際におっしゃられる方も多かった印象です。
ここでの貧血(ひんけつ)という言葉の使われ方は医学的には正しくありません。
貧血の定義として「血中ヘモグロビン(Hb)濃度が基準値を下回った状態」と定義され、その原因によりいくつもの種類があります。今回は比較的よく見られる貧血についてのお話しをさせて頂きます。
目次
- 貧血の一般的症状と定義・その時に考えるのは
- 1)鉄欠乏性貧血
-
2)腎性貧血
-
3)その他 アルコール・加齢由来のもの
- 最後に
貧血の一般的症状と定義・その時に考えるのは
貧血になると、全身に酸素がいきわたらなくなり、さまざまな症状が現れます。しかし、ゆっくりと進行した場合には、体が症状に慣れてしまい症状に気づかないこともあり、注意が必要です。
貧血の症状:
疲れやすい・めまいがする・動悸・息切れがする・立ちくらみがする・顔色が悪い・食欲がない 等
貧血の定義:
男性:Hb値≦13.5g/dl(19~59歳)、Hb値~12.0g/dl(60~69歳)、Hb値~11g/dl(70歳~)
女性:Hb値 ~11.5g/dl(19~59歳)、 Hb値 〜10.5g/dl(60歳~)
私達が採血検査等で貧血に気付いた際、鉄分喪失をはじめとした異常がないか、慢性的な血液喪失:わずかずつ続いている血液の喪失→胃や大腸などの消化管からの出血がないか(便の色の変化もしくは便に鮮やかな血が混じる等の発生がないか)、さらに女性の場合は生理との関連や婦人科疾患が無いか について聞き取りを行います。
1)鉄欠乏性貧血
原因の中で最も頻度が高く、よく知られているのが「鉄欠乏性貧血」です。体内の鉄が不足した場合に起こります。成人の体内にある鉄分の7割は血液中の赤血球内部にヘモグロビンという蛋白質として存在し、残る3割が肝臓や脾臓などに貯蔵されています。鉄欠乏が生じている場合は血液検査での赤血球に加え、血清鉄の低下と共に「フェリチン」という鉄と結びつく蛋白質濃度の低下があれば鉄欠乏は確実になり、何かしらの形で鉄の不足を補う必要があります。鉄欠乏を長期間放置する事で心拍数増加が遷延→心臓の肥大・拡大を招き、最終的には心不全の遠因となります。
女性では生理による出血(25~60ml前後)が定期的に発生し、それを補うべく体内の鉄分やビタミンが使われております。また妊娠中に赤ちゃんの発育・成長を母体の血流を回して送り込むため、血液が薄くなり結果的に貧血傾向になります。母体側での無理な減量や偏食などでこれらが慢性的に不足している状況だと、生理中の出血が加わり貧血の症状が出てきやすくなります。
必要な鉄分を補う補給法には、
1> 食物や水分から摂取量を増やす 2> 錠剤を内服する 3> 注射を受ける の三つの方法があります。
毎日の食事を見直す食事療法において、食材ではレバーを食事に取り入れる方が多いと思いますが、これには抵抗のある方も多いのが事実です。意外に効果が高いのが、鉄瓶で沸かした水を飲む・煮物に鉄鍋を使う 事です。但し、鉄分の吸収率は経口摂取量を100としてもせいぜい吸収され利用される割合が1%前後と低いため、効率よく鉄分を上げるために、2・3が多く用いられています。
2)腎性貧血
次に腎機能低下者にみられる「腎性貧血」です。健康な腎臓では腎臓でつくられる赤血球を増やすホルモン;エリスロポエチンが必要に応じて過不足無くつくられ、造血が行われるので問題はないのですが、腎臓の働きが弱まると、エリスロポエチンが つくられにくくなり、必要な量の赤血球がつくられない状態の結果貧血になります。
このようにして腎臓の働きが弱まることで起こる貧血を「腎性貧血」といいます。また、腎性貧血に鉄欠乏性貧血が合併する事もあり、鉄欠乏が認められる場合には鉄剤も併用されます。
不足しているホルモンを補う補給法として、
1>赤血球造血刺激因子製剤(ESA)ー注射製剤
腎臓の働きが弱まると 腎臓からのエリスロポエチンの分泌が減ります。ESAはこのエリスロポエチン を補うお薬です。月に1回皮下注射での投与が必要です。
2>HIF-PH阻害薬(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬)ー飲み薬
エリスロポエチンをつくる細胞に働きかけて、エリスロポエチンの分泌量を増やし、赤血球の産生を誘導します。種類によって毎日〜2日に1回の内服が必要です。
3>薬剤以外の治療として;輸血によって赤血球そのものを補う治療があります。
す。
3)その他 アルコール・加齢由来のもの
大酒家にもしばしば貧血を認め、これはすこし酒量を減らしてもらうと貧血が改善することでも診断されます。アルコールの解毒にビタミンが過剰消費されたり肝臓でのビタミン合成が低下したり小腸からの吸収が低下したりすることが原因とされています。
最後に「加齢による貧血」があります。これは疾患名ではなく加齢に伴い僅かに造血能力が落ちる事が原因です。貧血を認めても、悪性疾患や他の貧血の原因となる病態が見つからない場合、それは高齢化にともなう生理的 な変化であると判断されます。貧血の程度が軽度にとどまり、悪化・進行していくことがなければ日常生活への影響はさほどありません。ただ超高齢化社会を迎えた我が国では今後見聞きする機会は増えると思われます。
最後に
貧血については治療する方法が永らく鉄剤もしくは輸血 という選択肢しかありませんでした。
✴︎これは血糖値に関係無くインスリンを出す作用を持つS U薬とインスリン製剤しか治療薬ラインナップがなかった糖尿病の最初期の治療と同じ様相でした。
腎性貧血についてはまず月1回の注射製剤が開発→その後、毎日や隔日の内服薬が登場し治療がより早期から開始できるようになりました、また、鉄剤も永らく新規薬剤が出ておりませんでしたが、このたび従来の薬剤より飲みやすいものが開発され、服用しやすいものが出て参りました。新薬はどうしても新しい分野(抗肥満薬や認知機能の進行抑制等)に注目がされやすいですが、こういった既存の治療も日々ブラッシュアップが続いております。
以下の7つの項目のうち一つでも当てはまる場合、一度スクリーニング検査の実施が望ましいと考えます。当院もしくはお近くの内科外来にお越し下さい。
一度ご自身が貧血になっていないか、健診の結果などの見直しをお願いします。
貧血が特に疑われる症状について
- 健康診断の尿検査の項目で異常を指摘されたことがある。
- おしっこの色が変だと感じたことがある。
- おしっこが泡立っていると感じる。
- 夜間に何度もトイレに行く。
- 顔色が悪いと言われたことがある。
- 疲れやすい、疲れが取れない、息切れがする。
- 靴や指輪がきつくなった、むくみを感じることがある。
今後とも、しんかなクリニックをどうぞ宜しくお願い致します。
しんかなクリニック 内科・糖尿病内科
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