しんかなクリニック

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しんかなクリニック

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糖尿病内科

Medical

はじめに

糖尿病は現代医学では未だ根治には至らず、長期にわたる継続治療が必要な疾患です。週1製剤等の新規薬剤開発と並行し、検査機器の性能向上、治療する機器の性能向上があり、治療早期からの介入+合併症管理の質の向上が行われて参りました。その結果、合併症進行の抑制にて糖尿病でない方との平均寿命の格差はこの30年間で10年の寿命延長が認められた結果、その差は縮まりつつあります。

特に低血糖のリスクが非常に少ない薬や、肥満是正の効能を持つ薬剤(内服薬や週1注射製剤)との組み合わせもいくつか考えられ、今までは低血糖に大きな不安を抱いていた患者さまにも安心して治療を受けていただけています。海外の報告ですが、20年以上に及ぶ糖尿病予防プログラムの長期追跡調査において、ライフスタイルへの強力な介入の実施で2型糖尿病の予防または発症遅延効果が有意に認められた事が2020年に報告されております。病気を諦めず根気強く治療を継続していきましょう。

糖尿病とは

糖尿病は血管中のブドウ糖濃度(以下、血糖値)を下げる作用をもつインスリンというホルモン量の不足や効能減弱によりエネルギー源を必要としている細胞にブドウ糖がうまく取り込まれず、血糖値が高い(高血糖)状態となり、これが続くことで、からだ全体のエネルギーが不足する疾患です。続くことで糖尿病固有の合併症3つ(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害)及び動脈硬化性疾患3つ(狭心症/心筋梗塞、脳梗塞、下肢動脈硬化症/下肢壊疽)をはじめ、特定の癌の罹患率上昇や認知機能低下等、様々な合併症を来す病気が糖尿病になります。

糖尿病患者数は1000万人、予備軍を含め2000万人と全国民の5人に1人が患者か、もしくは予備軍と言われているまでに多数を占めています。日本での糖尿病患者数は横ばいになりつつありますが、世界的には日本を含む西太平洋地域での糖尿病患者数は今後約30年にわたり増加が予想されております(西太平洋地域のうち、中国での糖尿病患者数は上昇を続けると予想されるため)糖尿病有病者数は2019年時点で4億6,300万人に上ることが明らかになりました。また全世界的な調査によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人のうち、最大50%は糖尿病を基礎疾患としていた事も判明しております。

※インスリン:
からだの中で唯一血糖を下げるホルモンで、食後に血糖値が上がらないよう調節をする働きをします。また血液中のブドウ糖を身体の細胞に送り込んで、活動エネルギーに変えたり、脂肪やグリコゲンに変えてエネルギーを蓄えたりします。

糖尿病の症状

糖尿病の自覚症状には、高血糖によるものと、それに併発した合併症によるものがあります。しかし、糖尿病になっても症状が必ずしも全員に出ないため、自覚症状が無いまま糖尿病が放置されることも少なくありません。

インスリンの作用が低下すると血糖値が高くなり、体内の血液の濃度が濃くなります。するとからだは、細胞の水分を血液中に移動させて、血液中のブドウ糖濃度を薄めようとします。その結果、細胞が脱水状態となり、のどが渇いて(口渇)しまい、水分をよく飲む(多飲)ようになるため、結果として尿の回数増加(多尿)が起こります。また、脱水状態から皮膚の乾燥も見られます。インスリンの分泌が高度に障害され長期にわたると、糖を取り込む働きが悪くなり、体重が減少してしまいます。さらに高血糖を放置すると意識障害に陥ることもあります。

糖尿病の可能性がある主な症状
  • この頃太ってきた もしくは 食べても痩せていく
  • 甘いものが急にほしくなる
  • とても喉が渇く
  • 頻尿(おしっこの回数が多い)、また量が多い
  • 尿のにおいが気になる
  • 尿が出にくい
  • 残尿感がある
  • 全身がだるく、疲れやすい
  • 肌がかさつく(乾燥気味)、かゆい
  • 下腹部がかゆい
  • 手足がしびれる
  • 視力が落ちてきた
  • 立ち眩みがする
  • 足がむくむ
  • 火傷や怪我の痛みを感じない

糖尿病になりやすい方

  • 家族や親戚に糖尿病の人がいる
  • 妊娠中に血糖値が高いと言われたことがある
  • 肥満である
  • 運動不足である
  • 野菜や海草類をあまり食べない
  • 朝食を食べない
  • 食べ過ぎる
  • お酒をたくさん飲む
  • ドリンク剤をよく飲む
  • おやつを毎日食べる
  • 脂っこい食べ物が好き
  • 40歳以上である
  • ストレスがたまっている

糖尿病の種類

1型糖尿病

からだの中のインスリンの量が絶対的に不足して発症します。

インスリンを作る膵臓の細胞がウイルス感染などをきっかけに壊れてしまい、インスリンが体内から殆ど出なくなる病気です。インスリン皮下注射の継続が生活を送る上で不可欠となります(一部の内服薬を併用することがあります)。

2型糖尿病

遺伝でインスリンが出にくい体質を持つ、また運動不足や肥満や過食などでの脂肪の過剰摂取などの生活習慣により、インスリンの働きや出す量が弱まる・悪くなるといった条件が組み合わさって発症します。内服薬や注射製剤での管理を行います。日本での糖尿病の圧倒的多数を占めており、日本の糖尿病患者の約95%以上は、この2型糖尿病です。

その他特定の機序・疾患によるもの

血糖値の維持に関わる臓器の疾患(肝炎や肝硬変/肝細胞癌、膵炎や膵癌等)や薬剤(ステロイド製剤)の影響で血糖値が上昇することがあります。

妊娠糖尿病

母胎と胎児をつなぐ胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの効きが減弱し、食後血糖値が上がりやすくなります。妊婦健診の経過中にブドウ糖負荷検査が実施され、一定の基準を超えることで診断される病気です。妊娠中に発見または発症した新規の糖代謝異常を指します(元々糖尿病がある人の妊娠は糖尿病合併妊娠となります)。治療にはインスリン製剤を用います。多くの方は出産後に元の状態に戻りますが、妊娠糖尿病を経験された方は、将来の糖尿病リスクが高いことが研究の結果明らかになっています。出産後も定期的に検診を受けることをおすすめします。

糖尿病の合併症

糖尿病固有の合併症3つ(糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症)及び動脈硬化性疾患3つ(心血管病変<狭心症/心筋梗塞>、脳血管障害<脳卒中;脳梗塞・脳出血>、下肢動脈硬化症/下肢壊疽)をはじめ、特定の癌の罹患率上昇や感染症、認知機能低下や、骨折等様々な合併症を来します。

固有三大合併症

細小血管障害とも言われます。おもに細い血管が障害されて症状が起こります。この合併症は糖尿病発症後でしか起こりません。

初期には症状がなく、そのためにも定期的な検査が必要です。

※糖尿病神経障害

合併症の中で最も早く出やすい(発症まで…3~5年)症状といわれていますが、人によっては症状がないことも多いです。手足のしびれ、怪我や火傷の痛みに気づかない等、手足の末梢神経障害の症状が中心です。そのほか筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、発汗異常、立ちくらみ等、様々な自律神経障害の症状も出ます。

神経障害は下肢閉塞動脈硬化症(下記)と重なり、下肢切断原因の第1位(年間3,000人)を占め、著しいQOLの低下・死亡原因になります。

※糖尿病網膜症

成人失明原因の第2位で年間3,000人を数えます。網膜の血管が悪くなり、視力が弱まります。失明する場合もあります。また、白内障になることも糖尿病を持っていない人より早期に出現するといわれています。若年であればあるほど、眼科での定期的な診察を受けるようおすすめします。

※糖尿病腎症

透析導入の第1位で年間16,000人を数えます(2013年全導入症例の43.8%を占めました)。腎臓は血液をろ過し老廃物(ゴミ)を排泄する働き、造血ホルモンの産生や電解質のバランス調節やアルブミン・蛋白の再吸収、身体の中の水分調節する働きなど多種の働きを有しています。腎臓を構成する糸球体という部分の毛細血管が悪くなり、腎臓の機能が徐々に弱くなり働きが喪失していきます(最終的に尿が自分で作れなくなる)。この腎臓の働きの悪化は心血管死の独立した危険因子として知られています。糖尿病腎症の病期分類は第1〜5期までありますが、未治療のままでも長い間第1・2期で経過します。しかし、ひとたび顕性蛋白尿が出る第3期、腎不全期の4期の期間は短く、3期以降から透析に至るまでが短い間で進行することが明らかになっております。

 

動脈硬化性疾患(大血管障害)

動脈硬化性疾患は糖尿病の発症前から進展していることが報告されております。

※下肢動脈硬化症/下肢壊疽

発症に糖尿病神経障害が密接に関わることが知られています。下肢切断原因の第1位で年間3,000人が下肢切断を発症し、著しいQOLの低下・死亡原因になることが報告されております。

※脳血管障害<脳卒中;脳梗塞・脳出血>

糖尿病を有さない人に比し3~6倍の頻度で発生することが報告されております。

※心血管病変<狭心症/心筋梗塞>

糖尿病を有さない人に比し2~4倍の頻度で発生すると報告されております。

また糖尿病神経障害を併発していると、胸部症状(胸苦しさや胸部不快感等の)自覚症状が無いまま病状進行し、しばし突然死の原因にもなります。

 

その他の合併症(悪性腫瘍 感染症 認知症 骨折)

悪性腫瘍

糖尿病では一部の癌のリスクが高いことが報告されています。雑誌;糖尿病2012での報告にて、肝臓癌、子宮体癌は糖尿病を有さない人に比し2.5倍、2.1倍の頻度で発生すると報告されております。また他にも膵臓癌で1.8倍、大腸癌で1.3倍、膀胱癌・乳癌で1.2倍の頻度で発生することが併せて報告されました。2021年に入り、海外(英国)で2001~18年における糖尿病患者のデータを抽出して疫学的解析を実施したところ、糖尿病患者の主な死因は、心血管疾患を悪性疾患が上回っていることが示されました。癌の早期発見のために市民検診・人間ドック等によるがん検診が重要です。都道府県別特定健康診査受診率において2014年度では大阪府は41.5%と42位に留まっておりました。直近のデータでは是正が得られておりますが、引き続き検診受診が重要と考えられます。

堺市のがん検診に関するお問い合わせは(がん検診総合相談センター;電話:072-230-4616 FAX:072-230-4636)

受付時間:9時~20時(土日祝も受付・但し12/29~1/3を除く)

また「堺市がん検診総合相談ポータル」サイトや配布されている「受けようがん検診;PDFファイルは昨年度のもの」をご覧ください。

感染症(と損傷部位の治癒遅延)

何らかの原因で感染に関する抵抗力が減弱しうる病気として、免疫不全症や悪性腫瘍、膠原病・自己免疫疾患やステロイド・免疫抑制剤の内服加療があります。実は糖尿病や肝硬変、腎不全・ネフローゼ症候群等の代償機能不全でも同様のことが起きます。

そもそも糖尿病という病気は体の免疫力を低下させる事が知られており、細菌感染症やインフルエンザ・新型コロナウィルスを始めとしたウィルス性感染症も重症化を招きやすく、血糖コントロール不良からひとたび感染症が生じると、普通の方が喉の風邪で治る範囲のものが、肺炎まで進展しないと気付かないため重症化・重篤化しやすい、という特徴があります。また全世界的な調査によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人のうち、最大50%は糖尿病を基礎疾患としていた事も判明しております。

(糖尿病と新型コロナウィルス感染症(COVID-19)については、こちらのブログページをご参照下さい)

感染の際のホルモン異常により血糖値がさらに上昇、さらなる血糖コントロール不良を招き、なかなか血糖値が下がらなくなってしまう悪循環に陥ってしまいます。また、免疫力の低下のみならず、体の状態を元に戻すだけの力の無さもあるため、ひとたび傷が出来ても治りが悪く、下肢の血流不良がそこに重なると、低温熱傷→下肢の感染→下肢壊疽へ短期間で進展することも目にします。

「手術」は、身体状況を是正するために悪い箇所を切り取る治療 ですが、切り取る過程でどうしても傷が出来てしまいます。手術の時には<糖尿病が有るか無いか>、<血糖コントロールは良いか悪いか>は必ず聞かれる質問事項で、糖尿病があって血糖コントロールが悪い状態だと、緊急事態でない限り外科の先生は手術自体を延期される事が多い実情です。

認知症

糖尿病により動脈硬化による脳梗塞発症以外にも、脳内部の微小血管の脳血流障害、糖毒性状態での血中AGE生成、またインスリン作用不全による脳実質へのアミロイド沈着の要因により脳実質の病理学的変化が生じ、結果として認知症(脳血管性・アルツハイマー型)の発生リスクが糖尿病を有さない人に比し約2倍になるといわれています。

骨折

糖尿病患者さまでは,骨の構造変化(骨質が低下)により脆弱性骨折の危険が高まります。2型糖尿病患者さまでは糖尿病でない患者さまに比べ約2倍の骨折リスクがあることが報告されています。骨がもろくなる骨粗鬆症と糖尿病とは関連が深く、今後、骨代謝と糖代謝との関連については,さらなる研究の発展のため議論を進める必要があります。

また、転倒リスクを高める疾患としても糖尿病が挙げられています。

理由としては血糖変動異常に伴う意識障害・肥満によるバランス悪化が要因とされます。この他にも脳梗塞やParkinson病・認知症(Alzheimer病、脳血管性認知症等)、白内障・緑内障・糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、起立性低血圧・貧血、内耳疾患(メニエル病等)、長期臥床による廃用症候群、前立腺肥大が挙げられています。

糖尿病の検査

当院では血糖値の測定と同時にHbA1cの測定も行っております。

血糖値について

  • 普段の血糖値(随時血糖値)
  • 朝、何も食べていない時の血糖値(空腹時血糖値)
  • ブドウ糖を飲んだ後の血糖値(糖負荷検査後2時間値)

上記のいずれかに異常が出たら、別の日に再検査を行います。再検査で異常が出た場合、糖尿病と診断されます。糖尿病検査は特定健診に含まれているので、医療保険者が40歳以上の人全員に対して実施することになっています。健康診断は毎年必ず受診するようにしましょう。そして、健康診断で血糖値が高いと診断されたらご相談ください。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:<糖化(とうか)ヘモグロビン>について

糖尿病に関連する検査の一つで、採血した当日から過去1~2ヶ月の血糖値の「平均」を調べる検査です。このため当日の食事・運動などの短期間の血糖値の影響を受けません。

ヘモグロビン(以下、Hb)は赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がHbとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。

血糖値が低いほどHbに結合するブドウ糖の量が少なくなります。

逆に血糖値が高いほどHbに結合するブドウ糖の量が多くなります。

いったん糖化したHbは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元には戻りません。このHbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したもので(糖化ヘモグロビン/全Hb)×100(%)で示されます。

糖尿病は症状の有無、血糖値とHbA1cの値を総合的にみて診断します。糖尿病が否定出来ないところに当てはまった方は、ブドウ糖を飲む検査(糖負荷試験)などの詳しい検査が必要です。

また当院では血糖値とHbA1cを院内で当日・迅速な測定が可能です。

糖尿病の治療法

糖尿病は早期発見・早期治療、そして治療を中断すること無く継続することが何より大切です。健診などで糖尿病を指摘された場合など糖尿病の初期治療は、お薬での治療を始める前に、まず生活習慣の見直しを行います。そして、食事療法を開始し、運動療法と組み合わせながら血糖値の改善をはかります。

糖尿病の初期状態では、食後の血糖値だけに異常がみられます(=食後高血糖)。この早い時期から食事療法と運動療法を開始し、良好な血糖コントロールを維持することにより、病気の進展を防ぎ、合併症を起こすことなく、健常な場合とほぼ同様の生活を生涯にわたり営むことが可能になります。

糖尿病はそれだけでは命に関わることはありませんが、治療を放置したり、発見が遅れたりして合併症が出現・進行してしまうと生活の質の低下につながり、最悪で失明や心血管病の発症などをきたし命に関わることになりかねません。血糖値のコントロール状況と罹病期間によりどの程度合併症が進行しているのか、その人その人ごとに異なります。また自覚症状が殆ど無いため、自覚症状のあるなしに頼っていては合併症進行を防ぐことができません。そのため定期的な血糖値とHbA1c値の検査が必要です。

糖尿病の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱があり、これらを組み合わせて高い血糖値を正常域まで低下させ、血糖値をコントロールして糖尿病の合併症を防ぐことです。

合併症には、目や腎臓、神経、心臓や脳などの血管に障害が起きるものに加え、高齢者などでは骨粗しょう症や認知症のリスクも高めます。糖尿病の治療を成功させるためには、血糖値だけでなく、血圧や脂質、体重の管理も重要です。また、合併症の早期発見・早期治療のために、定期的に検査を受けることも大切です。

入院治療では下記の食事療法・運動療法・薬物療法(内服薬・注射製剤)と同じく、患者皆様が「糖尿病がどのような病気なのか」という知識を学んでいただくことが生活を送るうえで非常に重要です。このことから糖尿病は検査と教育の病気と言われることもあります。糖尿病と診断された方は治療継続と同時に、可能な限り、入院加療でのインスリン分泌の度合い・合併症の評価を含めた教育入院をご提案しております(大阪労災病院をはじめとした糖尿病教育入院を行う施設への外来紹介となります)。

普段は診療所に通院している糖尿病患者さんではこれらの合併症の検査を一通り受けられないケースもあります。(当院外来でも筋肉/皮下脂肪量や握力値の把握・経過観察や、動脈硬化検査を行っておりますが、レントゲン検査・エコー検査については設置がありません)

堺市立総合医療センター(堺市西区)や清恵会病院(堺市堺区)では1週間〜の予定で糖尿病の入院加療を行っております。また、大阪警察病院(大阪市内天王寺区)では、合併症評価外来や週末短期入院というものを実施しています。

合併症評価外来は平日(月〜金)午後に開設され、およそ3時間ほどで終了し、費用は3割負担で8,000円程度です。週末短期入院については、3泊4日もしくは4泊5日で、合併症の詳細な評価や病態把握、血糖変動の指導などを行います。希望者には、上部消化管内視鏡検査も実施されています。

 ご興味のある方は是非院長始め当院スタッフに相談をお願いします。

 

糖尿病の治療方法3種:食事療法 / 運動療法 / 薬物療法

食事療法

糖尿病の最も効果的で重要な治療方法です。特に食べてはいけない食品があるわけではありませんが、外食や間食、アルコール等は1日に摂取するエネルギー量が過剰になりやすいので、注意が必要です。またBMI25以上の方に関しては適切な分量の食事で、必要とする栄養を摂取できるようにコントロールをするのが重要です。必ず医師の指導の下、バランスの良い食生活を送りましょう。

※当院1Fのスギ薬局新金岡店には管理栄養士が在住しております。

詳細は(https://www.sugi-net.jp/service/dietitian/)を参照ください。

運動療法

食事療法と同様、糖尿病の基本となる重要な治療方法になります。

筋肉を減らさず脂肪を減らし、健康的な体質改善をすると共に、カロリー消費することで直接的に血糖を下げることが重要です。また、運動によりブドウ糖や脂肪酸の体内での利用を促進させ、血糖値の低下、およびインスリン抵抗性の改善が得られるといったメリットもあります。

但し、合併症がある場合に急な激しい運動を行うと、病状によっては合併症を悪化させる場合もあるため運動が制限されることもあります。

運動の種類や時間・回数等、必ず医師の指導の下、適切な運動を心がけましょう。

薬物療法

糖尿病の薬物療法には、飲み薬(経口血糖降下薬)による治療と注射製剤(インスリン製剤<皮下注射製剤のみ>とGLP-1アナログ製剤<内服薬と皮下注射製剤>)による注射療法の2つがあります。

・内服薬(経口血糖降下薬) →インスリンを「放出させる」・またはインスリンの「効きを良くする」効果を有しています。しかし、インスリンの分泌力が悪い状態だと、複数種の錠剤を飲んでも血糖コントロールが悪いまま改善しないこともあります。この場合、インスリン皮下注射療法の併用を検討します。 
・GLP-1アナログ製剤 →インスリンの効果を強めるホルモンとして腸管から放出されるホルモンです。当初は注射製剤のみでしたが、週1皮下注射投与や毎日の経口投与製剤が発売されました。
・インスリンとは 
1)血糖値を下げる事が可能な体内で唯一のホルモンです。
2)食事に関係無く血中に一定量が分泌<α>され、食事の際には瞬間的に血中濃度が上昇する<β>事で血糖値の上がりすぎを抑制させる働きがあります。
3)現時点で経口投与が出来ず(経口投与ではインスリンが速やかに分解されてしまう為)、2024年8月時点では1日1回以上の自己注射(皮下投与)が必要になります。
インスリンホルモンが発見された1921年当初、海外では牛や豚が食肉加工された後に出た膵臓からつくられていました。莫大な膵臓から取れるインスリン量はわずかで非常に高価でした。日本ではそもそもの家畜資源が乏しい事、また国内事情(二次大戦前)から、当初魚や鯨の臓器を原料にしたインスリン製剤が作られていました。日本企業はこぞってこの魚・鯨由来のインスリンの抽出・精製に取り組んでいましたが、安定生産ができずにいました。     二次大戦後、工場で機械的にヒトインスリンホルモンが大量生産可能になり、また貿易自由化によってこの輸入製剤が増加するに伴い、動物由来のインスリン製剤は衰退してしまいました。

オリジナルであるヒトインスリンホルモンの構造式に改良を加える事、又は製剤に入れる添加剤の調節により

投与後の発現効果を早め、上記<α>を類似させる製剤

投与後の発現効果を遅らせ、上記<β>を類似させる製剤

が発売されました。今後、週1回投与が可能なインスリン製剤が発売される予定です。

使用する薬剤の選択は、個人個人の体質や合併症の程度にあわせて千差万別です。

1型糖尿病では原則、インスリン製剤での管理を行います(一部の経口血糖降下薬を併用することもあります)。

2型糖尿病では食事療法や運動療法で改善されない時に、経口血糖降下薬やGLP-1アナログ製剤、及びインスリン注射製剤を使います。特にインスリン製剤は、不足している、もしくはうまく作用していないインスリンを補い、自分の膵臓を休める役割もあり、最も体に優しい治療法です。決して糖尿病がひどくなったから用いるものではありませんが、一度始まったインスリン療法から内服のみに治療法を変更するには、前提として自分の身体からインスリン分泌が十分にあることが必要です。

 

体調不良時・低血糖時の対応について

糖尿病をお持ちの患者さんでは、(新型コロナウイルスに限らず)何らかの原因で体調が良くない状態になり、発熱や嘔吐/下痢、食欲不振を呈する等で血糖値が乱れやすくなった状態を「シックデイ」と呼びます。また糖尿病管理において注射製剤を使われておられる方で1日あたり決まった回数で血糖測定が保険適応となっています(1日1~4回 詳しくは後述)が、血糖値が低くなったときは適切な対応が必要です。

(シックデイについて・体調不良時は血糖上下が大きい)

体調不良時は通常の時と異なり、病気や痛み等から出るストレスホルモンの働きでインスリンの効きが相対的に悪くなります。通常の方では血糖値が上昇しても即座にインスリン分泌が増えるため実測血糖値としてはほぼ変化がありません。しかし糖尿病の患者さんではインスリン分泌能の低下/効能の減弱により、十分な対応ができません。このためシックデイ時は血糖値がいつもよりも高くなる事が往々にしておきます。
 一方で胃腸の不調等で食事が進まず、食べる量が少ないにも関わらず、いつもの通り薬を飲んだり、注射をすることで血糖値が低くなることもあります。さらに、体調不良により脱水傾向があると腎臓の機能を低下させるため、腎臓から排泄される薬剤がある場合は、その成分が体内に残りやすく血糖値が余計に下がってしまうという悪循環にもつながります。

※1型糖尿病の方;インスリン製剤の調節

1型糖尿病の方では、例え食事が取れなくてもインスリン注射を完全に中断してはいけませんシックデイでは状況に応じた個別対応が必要ですので、まず、かかりつけ医療機関にどのように対応すべきかを電話で連絡頂き、適時指示を受けてください。
(一例:1日1回タイプのインスリン製剤は同量か少し減量した上で投与継続・1日3回タイプのインスリン製剤は朝昼夕のタイミングで血糖値が200以上のタイミングで1単位~等)。

※2型糖尿病の方;内服・インスリン製剤の調節

2型糖尿病の方では、一般的にシックデイ時は食事量(特にご飯やパンなどの主食量)に注目頂き、半分以下の場合は投薬も調節が必要です。なかでも発熱・下痢などで脱水の恐れがある場合はメトグルコ等のメトホルミン薬、SGLT-2阻害薬(スーグラやデベルザ・フォシーガ・ジャディアンス・カナグル・ルセフィ)、SU薬(一般名:グリメピリド・グリクラジド・グリベンクラミド)の内服は一回飛ばすことも検討して下さい。インスリンを使用中の方では食事が進まない場合は食後打ちとして、先に食事→食事量に応じて場合によって通常時より減量してインスリンを打つなどの対処法を予め主治医の先生と相談しておくことが大切です。
(インスリンのジェネリック版であるバイオ後発品と同時期に、食事後に注射しても今までの食前投与と効果が変わらないように既存製品の改良したものも注射製剤のラインナップに加わっております。興味のある方はかかりつけ医までご相談下さい)

(低血糖時の補食の内容は特に注意)

血糖値が低くなったときは迅速な対応が必要です。食事前のタイミングであれば、上記のようなインスリン製剤の調節も可能ですが、それとは関係無く低血糖になった場合の対応については患者さんにお尋ねしても「ブドウ糖/ラムネ等の砂糖菓子」「ジュース」といった方もいれば「クッキー」「チョコレート」「アイス」を食べておられる方もいました。

結論からですが「ブドウ糖や砂糖菓子」「ジュース」が望ましく、「クッキー」「チョコレート」「アイス」は避けるべきです。糖分の吸収は口腔内からは微量しかされず、実際には胃を通り抜けた先の十二指腸以遠に届かないと行われません。その面では液体になっているジュースは速やかに血糖値が上がりやすく、緊急時に有用です(意識が怪しい状態で他の方が飲ませると誤嚥リスクがあるので注意)。クッキー・チョコレート・アイスは全て油分を含むため、胃内に留まりやすく血糖値が「後で」あがる事が多いため、低血糖時の補食には向きません。

自己血糖測定について

皮下注射製剤での治療を受けておられる方は、保険診療にて1日あたり1回〜4回の自己血糖測定(Self Monitoring Blood Glucose-SMBG・以下簡易血糖測定と表記)を行う事が認められております。その際、アルコール綿で手指を消毒するように指導をさせていただいており、実際多くの方がその後もアルコール綿での清拭をされておられます。2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大により、マスクやトイレットペーパーに続き、手指消毒に使うアルコール消毒液をはじめとした衛生用品にも影響が波及し、文字通り(玉突き)の影響で、普通の方にはあまりなじみのない消毒綿や医療用アルコール綿、カット綿にも、その影響が及びました。

現在はアルコール消毒綿の供給も戻っており、従来のように使用可能ですが、水道水・石けん等での手指洗浄が行える環境(ex家庭内)においては、測定前のアルコール綿での手指消毒は必ずしも必要ではありませんので、お伝えします(但し、手に付いた水分はきちんと拭き取ってから測定をお願いします)。

当院は2021年現在、血糖測定機器として三和化学社のグルテストアクア・グルテストアイを採用をしておりますが、もう一機種としてアボットジャパン社のFreestyleリブレ(以下フリースタイルリブレ)を採用しております。ブログ記事にもいくつか挙げておりますので、ご参照下さい。

フリースタイルリブレを保険適応で使用可能なのは
当院でインスリン製剤の処方をしており、月に1度の定期受診頂ける方で、
 ●1型糖尿病の患者さん
 ●2型糖尿病の一部(1日3回の強化インスリン療法を施行中の方、または強化インスリン療法を施行後に混合型インスリン製剤を1 日2 回以上使用している)の方

です。1日の注射回数に応じて、月にお渡しできるセンサー数が異なります。

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