シックデイとは糖尿病患者さんが治療中に発熱・嘔吐/下痢で、または食欲不振のため食事が充分に摂取できなくなる状況を呼びます。このような状態では、インスリン非依存状態の患者さんで通常は血糖コントロールが良好な場合でも、著しい高血糖やケトン血症(ケトーシス)に陥ることがあります。インスリン依存状態の患者さんだと、インスリンの絶対不足により糖尿病ケトアシドーシスを発症すると生命の危険の可能性もあり、特別の注意が必要です。シックデイの状態では、体内の炎症などによって血糖値が上昇やすくなります。
また、非常時に於いてはストレスや環境の変化でシックデイが生じやすいとされています。
事前にシックデイの対策についても心構えをしておいてください。
【日常生活】におけるシックデイ対策
1).(特に腹部を)温かくして安静にお過ごし下さい
(水分は最低1~1.5リットル程を分けて飲むようにしましょう。一気に飲むと尿意に反映されるため避けて下さい)。
2).食事や水分/電解質(塩分やカリウム等)の摂取について
食欲のない時は、日頃食べ慣れてなるべく消化の良い(例えば、おかゆ・うどん・スープ・ジュース等)を選び、できるだけ摂取をするように行いましょう。
血糖値は普段のレベルから上昇しやすい状況ですので、腹6〜8分位で留めて下さい。
3).必要な検査で、現状のチェックをお願いします。
体温・食事量、自覚症状などと、血糖測定が出来る方は血糖測定値を記載して、
日々の振り返りが出来るようにして下さい。
4).薬の調節等→主治医へ連絡/早めの対応を仰いで下さい。
○糖尿病の内服薬は食事摂取を前提として作られております。このため、食事が摂取不良の場合は基本的に中止が望ましいとされます。SU薬(グリメピリド・グリクラジド)、速攻型インスリン分泌促進薬(ナテグリニド・ミチグリニド・レパグリニド<製品名シュアポスト>)は中止してください。またビグアナイド薬(メトグルコ/メトホルミン)やSGLT2阻害薬(商品名:スーグラ/デベルザ/フォシーガ/カナグル/ジャディアンス/ルセフィ)も、食事が充分取りづらい間は中止が望ましいとされます。
○インスリン治療中の患者さんでは、食事が取れなくても自己判断でインスリン注射を中断してはいけません。 超速攻型インスリンもしくは速攻型インスリンを使用されている方では3〜4時間に1回ずつ血糖測定を行い、血糖値200mg/dlを超えていた場合はその都度1〜2単位を投与する事も状況に応じて行われます。
●警戒すべき徴候・入院加療を検討する徴候)
下痢・おう吐、強い腹痛等が止まらず、食事が充分とれない。
高熱でぐったりしているために高血糖(350mg/dl以上)が続く時・尿ケトン体強陽性等
等を認める場合、緊急入院加療を念頭に基幹病院へ紹介 としております。
5).(特に1型糖尿病をもつ女性では)月経周期での血糖値推移の変化に注意が必要です。
月経前後で血糖値変動メカニズムについて 詳細は「若くして糖尿病になった方へ」を参照下さい。注射製剤使用者では普段よりIns製剤の効きが変わりますが、個人差が大きいので、判断に迷いがある場合は主治医と相談の上で決めて下さい。
6).出張や旅先で病気になった時のため)
健康保険証、糖尿病健康手帳、常備薬、ブドウ糖など忘れずに持参。
7).出張や旅先で病気になった時のため)
他病院にかかる時に備えて糖尿病の治療内容のメモ・主治医のいる医療機関の連絡先・糖尿病手帳を持参。キチンと現状を説明(できるように)。
【災害避難時】のシックデイの対策
・水分を十分・小まめにとる事で脱水を防ぐ
→水やお茶などを飲み、脱水にならないように注意しましょう。こまめに飲むのがポイントです。「喉が乾いたから」と、一度に多くを飲むとしばらくしてから尿意が出やすくなったりしますので、一回量は少量で・頻度を増やして補うようにしましょう。
・足の曲げ伸ばし程度で良いので、こまめに運動を行ない、ときどき身体を動かしましょう
→長時間同じ姿勢でいると、血液の流れが悪くなり、血管が詰まりやすくなるとされています。 通路を歩くだけでも「りっぱな運動」になりますが、混雑状況に応じて膝の屈伸運動やつま先・かかとの上下運動といったものは簡易ながら狭いスペースでもできるおすすめの運動になります。
・食欲がなくてもできるだけ、スープやおかゆなどの炭水化物をとる
→【日常生活】におけるシックデイ対策2).に同じ
・手持ちの薬の残数・使い方に注意する
→【災害時の薬の注意点】に同じ